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「バンブーロッドのいま」
     発行所 渡渉舎 


価格:¥6,090 (本体¥5,800)
サイズ A5変型判
本 文  総ページ 704ページ
      カラーページ以外の本文の写真は
      黒+茶色の2色ダブルトーン印刷。
    

 ■『バンブーロッドのいま』をつくりながら考えたことなど 
       渡渉舎/倉茂 学

 故・中沢孝さんが編集発行した『アメリカの竹竿職人たち』(阪東幸成/フライの雑誌社)の発行が1999年。あれから8年が経ち、日本の釣り人のあいだでアメリカのバンブーロッド・メーカーのブランドイメージへの憧れの気持ちが一段落し、本当に自分に合ったバンブーロッドはどんな竿なのかという探索が始まっているように感じられます。なかには、ブランド主義から遠く離れたところで、自分の直感にしたがって感性に合うビルダーとコミュニケーションし、好みの竿を作ってもらって愉しむ人も出てきています。その通な釣り人の要求に応えてきた日本のビルダーたちのキャリアも相当なものとなってきているようです。

 とくに日本の釣り人は、釣り竿の味わいの微妙なちがいに歓びを見出す感性を持っているのではないか。なぜか。戦国時代、武士たちが、ときに刀を釣り竿(竹竿)に持ち替え、精神の鍛錬のために集中力を求められる釣りをしたとのことですが、そこで培われた、竿への真摯であったであろう価値観が遺伝子に潜んで、いまの私たちのなかにもあるのかもしれない...それは夢想かもしれませんが、タナゴ釣り、フナ釣り、アユ釣り、渓流釣り、ハゼ釣りなどの海釣りと、四季の移り変わりに合わせて多彩な釣りをそれぞれの釣りに合った竹竿で楽しみ、竿師に好みの竿を誂える文化を日本の釣り人は持ってきたことを考えれば、いまわれわれがバンブーロッドにもさまざまな味を求めるのは自然なことと思えます。実際、日本のバンブーロッド・ビルダーのなかには、平田真人さんや村田孝二郎さんをはじめフライフィッシング以外の釣りのキャリアも豊富にお持ちの方や、中村羽舟さんのように和竿師としての経験をお持ちの方のような、釣り竿の妙味を知り尽くしていると思われるビルダーもいらっしゃいます。

 その日本のビルダーたちがつくる竿はどんな竿なのか、日本の釣り人が望む竿はどんな竿なのか、といったことを今回の『バンブーロッドのいま』で主に探索しました。ひとり例外として、ヨーロッパのビルダー、ビヤーネ・フリースさんにもご登場いただきました。フリースさんは、いち釣り人としてバンブーロッドへ接近し、ギャリソンの本によってバンブーロッド・ビルディングに導かれたという点で、日本の多くのビルダーと近い立場にあります。日本でも熱狂的なファンを獲得している彼の竿はどのような考えをもとにつくられているのか、彼の竿のどこが日本の釣り人の琴線にふれるのか、デンマークの仕事場を訪ね、取材をしました。

 その他に、1921年にアメリカ・ミシガン州に創業し、いまなお根強いファンが日本にもいるポール・ヤングについての記事、和竿に惹かれるフライフィッシャーマンのお話し、ひそかに相当な数にのぼると思われるアマチュアおよびセミプロビルダーを取材した記事などもあります。

 各地で取材を進めていくうちに、バンブーロッド・ビルダーという仕事が、いまの時代のなかでいかにユニークで貴重なのか、あらためてわかってきました。すべての工程を自分の考えで自分の手でこなし、ユーザーとは一対一の関係にある。その昔、人々は物々交換で必要なものを手に入れて生活していたそうですが、そこでは縁によって人と人がつながり、物がやりとりされたそうです。やがて貨幣が生まれて市場ができ、縁が薄くなっていった。バンブーロッドにも当然値段がついていますが、現代の経済の大きな流れとは別のところで生まれ、縁によって人の手にわたっている印象があります。その濃密でダイレクトなつながり感をともなった動き方がまさに「フライフィッシング的」でもあり、人と人との関係や、いち個人の個性や魂などがあらゆる場面でバラバラにされ合理化されていく傾向が強くあるいまにあって、じつに新しく感じられます。

 今回は、2005年の12月末に宮城のバンブーロッド・ビルダー齋藤研さん(Old Crab)を取材させていただいたのを皮切りに、結果、21人のビルダーの方々、ひとりのフェルール職人の方、25人のユーザーの方々にご参加いただきました。今回取材させていただいた方々以外にもユニークなビルダーの方々がいらっしゃることと思います。今後ご縁があることを願っております。

 取材を始めた当初は、半年ほどで本ができあがると思っていたのですが、結局およそ18か月の取材編集期間を経て、ボリュームやや過剰かとも思える本ができました。この『バンブーロッドのいま』をきっかけに、みなさまのバンブーロッドへの興味がいっそうふくらみ、またフライフィッシングの愉しみがより豊かで濃密なものになることがありましたら幸いです。


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